「日本の自殺」について


 2012年3月「文藝春秋」(3月特別号)に掲載された論文「日本の自殺」は37年前の同誌に掲載されたものである。何故再掲載されたかと言うと、朝日新聞の12年1月10日付け1面の若宮啓文主筆の「『日本の自殺』がかつてなく現実味を帯びて感じられる」と記したことからだ。高度成長に湧き豊かさを享受している現在の日本だが、かつて栄華を誇った古代ギリシャローマ帝国の衰退と没落と同じ道を歩いている・・・、と言うものである。
 政治も経済も外交もどうにもならない日本のあがきの中で、過去の文明が滅びていく過程が今の日本と同じであると37年前に予言したグループがいたと言う事だ。それが「グループ一九八四年」で、日本の保守派知識人の匿名グループと言われている。
 話しは飛ぶが、ジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。そして、村上春樹氏は『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。私は1984年をトリガーとして大きな潮流が変わっていく点だと思うのである。だれがこの潮流をつかみこれに乗るのか、混沌とした時代に飛び込む国民を救ってくれるのだろう。そんなことを考えながら「日本の自殺」をよんだ。

文藝春秋 2011年 03月号 [雑誌]

文藝春秋 2011年 03月号 [雑誌]