<W杯>駒野「前向いて帰ってきた」

 駒野選手が、パラグアイ戦後、公の場で初めて口を開いた。記者会見後に報道陣に囲まれると、「あのときは、もう日本に帰ることができないと思った。でも、メンバーに励まされ、前を向いて帰ってこられた」と話した。

 パラグアイとのPK戦では、岡田武史監督から3番目のキッカーに指名された。自信を込めて右足を振り抜いたボールは非情にもクロスバーに当たって外れた。「その瞬間は頭の中が真っ白になった」。敗退が決まると、ピッチに泣き崩れた。プロでの公式戦では初めての失敗。「日本のみんなに悔しい思いをさせてしまった責任が自分にはある」と、自責の念にかられた。

 しかし、チームメートや家族の励ましで立ち直った。試合後のロッカーで、松井大輔選手(グルノーブル=仏)や5番目にけるはずだった田中マルクス闘莉王選手(名古屋グランパス)から「俺たちがけっても、外していたかもしれないんだから」と慰められた。

 その夜は一睡もできなかったが、家族や友人らからは「胸を張って堂々と日本に帰ってくればいい」とメールが相次いで届き、気持ちを切り替えることができた。その時のことを思い出し、「本当にいいチームメートや家族に恵まれた」と、感謝の言葉を口にした。

 駒野選手は「日本代表としてこの大会に出られたことを誇りに思う。今度こういうチャンスがあれば、代表戦でも、Jリーグのカップ戦でも、絶対に自分から手を挙げてけりに行く」と、吹っ切れた表情で誓った。

・ 駒野選手の母友美子さん(54)は、和歌山市内の自宅のテレビで息子の姿を探した。「落ち込んでいないだろうか」。心配しながら見つけた顔。「すっきりした表情をしていましたね。またJリーグで活躍してほしい」と期待していた。

 その後、本人から電話があり、「無事帰国しました。今から静岡に帰るけれど、ずっと応援してくれてありがとう」といつもと変わらない口調を聞くと、「お帰り。本当にお疲れさま」とだけ伝えた。近々、帰省することになっており、友美子さんは「大きな仕事をしたことは分かっている。でも、できるだけ普段通り迎えてあげたい」と話した。


今回のワールドカップでの日本の活躍は愛国心を感じさせてくれたいい試合ばかりであった。全員がチームプレイに徹する、見ていても熱くなるようなシーンが頭をよぎる。特にパラグアイとのPK戦で3番目のキッカーに指名された駒野選手、思いっきり蹴ったボールがバーに当たった時のシーンは何度も見過ぎて体が拒否反応を示してしまうほどの映像だ。

 初めは残念であると思ったが、1日関西空港に帰国後空港内のホテルで記者会見を見て全員の堂々とした受け答えと、和やかな雰囲気はそれを忘れさせてくれた。特に駒野の笑顔が印象的でよくやったと、お前がいたからここまでなんて感じたのである。

 試合であるのだからいつも勝つとは限らない。勝ちっぷりよりも負けっぷりが好きである。今回のワールドカップは予想もつかない嬉しい負けっぷりであった。ゴン中山に駒吉と呼ばれる面白い性格の駒野友一選手であるが、今回出身の和歌山県から特別表彰されるようでサッカーを素晴らしいスポーツとして知らしめた彼の功績は大きい。野球よりサッカーも面白いぞと本当に感じてしまった。