クレヨンしんちゃんの臼井さん、がけ下写真撮影中に滑落か


 群馬・長野県境の荒船山のがけ下で遺体で見つかった漫画家臼井儀人さん(51)の「クレヨンしんちゃん」を発行する双葉社が21日記者会見し、臼井さんのデジタルカメラにがけの上から下に向かって写した写真が残っていることを明らかにした上で「(がけ下を)撮った瞬間に足を滑らせてしまったのだと思う」との見方を示した。

 臼井さんの葬儀は近く、近親者により非公開で営まれる予定で、家族と協議しお別れの会の開催を検討する。「しんちゃん」の漫画やテレビアニメ、映画シリーズの継続については「関係各社、ご家族、いろんな方と相談したい」と述べるにとどめた。

 会見したのは同社編集局の赤坂了生局長、島野浩二局次長ら。現地を訪れた島野氏によると、群馬県警から見せられたカメラには約30枚の写真が残っており、最後の1枚は、がけ下を見下ろす角度で撮影したものだったという。

 双葉社は、妻久子さんら家族の「皆様のあたたかいご支援、厚いご声援に心から感謝いたします」とするコメントを公表。また「このような結果になってしまい無念。大きなショックを受けている」との同社談話を発表した。


 一番安全な職業のような気がするが、素晴らしい芸術家を事故で失ってしまい非常に残念であると悲しんでいる。


 『クレヨンしんちゃん』と言えば、1990年8月週刊マンガアクションで連載開始された。当初は子供向けではなく、大人向けに作られた漫画であった。その後1992年アニメ放送開始され、生意気で憎めない幼稚園児が定着してくる。何といっても大人を楽しく翻弄してくれるところは、大人も子供もやさしい気分になり、幼稚園児を象徴する「クレヨン」と言う言葉で、絵に24色の色彩を与えてくれる気分になるのである。


 『しんちゃん』というのも単なる固有名詞ではない。しんちゃんが生まれたときにヒロシパパは「しんいち・とものり・すぐる・けんた」と書いた紙をみさえのいる病院に持っていくときに雨でびしょ濡れになり、読める字を集めたのが「しんいち・ともり・ぐる・んた」になったと言われている。


 作家の故臼井儀人(うすい よしと、1958年4月21日生まれ)静岡県静岡市出身、埼玉県春日部市育ち・在住であった。彼は漫画家は「謎めいていた方がいいから」「夢を売る仕事」という理由で「決して顔出ししない漫画家」であった。だから、最後まで顔を出さずという強い信念が彼の最後まで貫き通された壮絶な人生であった。


 創作する仕事をやっていると新しいイメージを探さねばならない。そんな中で自分の興味を追求していくと、危険なところにどんどん踏み行ってしまい、事故につながったと思う。残念でしょうがないのであるが、人は死んでから偉大さが分かるというが例外でない。彼は作家らしくない普通の優しい人を演じた芸術家であったのであろう。


 これからクレヨンしんちゃんを誰が育てていくのか分からないが、彼と一緒に天国に行って下界を見守ってくれるのも、良いのではと思うのである。折りしも、彼の作品を原作にした実写映画「バラッド 名もなき恋のうた」が現在公開中である。そんなときに他界したのも運命であると言わざるを得ない。


 ご冥福をお祈りいたします。