『おくりびと』がグランプリ(モントリオール世界映画祭)


俳優の本木雅弘(42)と女優の広末涼子(28)が主演する映画「おくりびと」(13日公開、滝田洋二郎監督)が、カナダで開かれていた第32回モントリオール世界映画祭で最高賞のグランプリを獲得した。日本作品の最高賞は、06年の奥田瑛二(58)監督作「長い散歩」に続く快挙となる。



 「おくりびと」というのは、葬儀の際に遺体をひつぎに納める納棺師のことを指すようである。元チェロ奏者で新人納棺師・大悟を演じるのは本木雅弘。そして会社社長の佐々木を演じるのは円熟した名優 山崎努、大悟の妻を演じるのがはまり役の広末涼子。さまざまな死に向き合うことで、自分の生き方を見直し、そこに息づく愛というものを感じるためにはしっかりとした3人の演技が光る作品である。



 メガホンをとったのは『木村家の人々』『バッテリー』『壬生義士伝』の、監督・滝田洋二郎氏である。監督は昭和30年12月4日、富山県西砺波郡福岡町(現・高岡市)生まれ。富山県高岡商業高校卒業後、「獅子プロ」に入社し、昭和56年にピンク映画で監督デビューするという異色の監督である。彼の作品で好きだったのが、昨年、松下電器産業(株)「HAPPY Xmas SHOW! 2007」(日本テレビ系列)で放映された120秒のCM「こころをつなぐ  ビエラにリンク」であった。子供同士の友情をテーマにした「12月のホタル」、孫娘とおばあちゃんのこころの交流描く「二人の花嫁」、夫から妻への感謝の気持ちをテーマにした「母の定年退職」の3編。どれも綺麗な映像で120秒でまとめるとは、才能の凄さと綿密なストーリー性に驚かされてしまった。


 今回も32回モントリオール世界映画祭で最高賞のグランプリを獲得したが、今開かれているベネチア国際映画祭でなく、モントリオール向けの作品であったのだろうと解釈する。他にも君塚良一監督と鈴木智さんが共同脚本を手がけた「誰も守ってくれない」が最優秀脚本賞を受賞した。主演していた佐藤浩市さんは主演男優賞でなかったことを残念がっていたが、親子2代に渡り授賞作品に出演できた事を喜んでいた。


 何か、ベネチア国際映画祭の前哨戦とでも云いたくなる様な、弾みがついたことに楽しみが増えたようで金獅子賞が待ち遠しいのである。