副振動(あびき)

 24日夜から25日未明にかけて、鹿児島県の東シナ海沿岸を中心に、海面の高さが数十分の周期で変動する「副振動」現象があり、甑島列島薩摩川内市)などで係留中の漁船計19隻が転覆。同市上甑町瀬上(上甑島)では、浦内湾近くの住宅8棟が床下浸水した。けが人はなかった。

 同県水産振興課などによると、転覆被害は、上甑島・浦内湾が8隻▽下甑島・片野浦が6隻▽南さつま、いちき串木野両市の漁港などで5隻。屋久島でも漁船の一部が壊れた。

 聞きなれない言葉が目に入った。


 津波と同じ様なものかと思ったら、まったく違うものであるらしい。もともと、潮汐(ちょうせき)は月と太陽の引力によって、海水面の周期的な昇降が起こる現象で潮位の変化をいう。これが主振動とよばれるもので、この主振動の波に数分から数10分程度の周期で海面の昇降現象を繰り返すのを副振動と呼ぶのだそうな。


 これには気圧変動、風の影響などにより発生した波が湾内に入り込んで、反射して共鳴を引き起こすことが要因となる。九州では3月ごろにこの現象が起こり「あびき」と呼ばれ、1979年(昭和54年)3月31日 最大全振幅は278cm、周期は約35分という記録がある。非常に怖い現象である。



 ちなみに「あびき」とは「網引き」が由来で、単に網を引いて漁をする事ではなく、速い流れによって魚網が流されたり、舟が網に引かれて転覆したりする事から呼ばれるそうである。最近は湾内に定置網、養殖筏があるが被害が出やすい事が言われている。


 しかし、よく考えると結果的には津波とおなじ現象であり、今回も人的被害が出なかったことは不幸中の幸いである。おそろしい現象である。