サメガレイの背中に張り付いていた14年前の手紙

 14年前、神奈川県川崎市立宮崎小学校の1年生が風船で飛ばした手紙が、きのう、千葉県銚子漁港に水揚げされたサメガレイの背中に張り付いているのが見つかった。宮崎小創立120周年記念の行事で飛ばした1通で、手紙の主は今21歳の大学生に成長した川崎市宮前区の白髭(しらひげ)奈津実さん。水深1000メートルの深海に生息するカレイが犬吠埼沖の底引き網にかかった


 銚子港といえば、九十九里浜の上に位置し、利根川が太平洋に注ぎ込む犬吠埼の懐にある。犬吠埼といえば云われは諸説あるものの、義経の愛犬「若丸」が岬に置き去りにされ、主人を慕う余り、7日7晩鳴き続け力尽きて岩になったことから犬吠(犬が吠く)と名付けられた。


 好きな作家に乙川優三郎氏がいるが、小説「かずら野」の中に流浪の果てに銚子へ流れ着く話がある。この中で銚子の漁村の描写が好きである。幸運な人生があれば不幸な人生もある、しかし縁あって銚子に流れ着いた運命を菊子は真摯に受け止める。そんなところが思い出された銚子だが、漁師が命をかけて漁をする姿は真剣勝負だ。だから「おてがみをひろったかたは、おへんじをください」という文字を見逃さなかった。


手紙の全文

おてがみをひろった人へ

 わたしは小がっこう1ねんせいです。いまわたしたちのがっこうは、百二十さいです。そのおいわいで、みやしょうおんどをうたったりおどったりします。このおてがみをひろったかたは、おへんじをください。

 しらひげなつみ

川崎市宮前区馬絹1795 川崎市立宮崎小学校


 不思議だがいい話である。今日は地元の白塚の魚屋で前物でも買い求め、正月の残り酒でも飲みたい気分である。