無題

  「親は絶えず子どもの犠牲になる。それは永遠に繰り返される―。平凡な永い人生を歩き、終着点が見え始めたとき、今まで耐え忍んできた人生から開放されたい。男にとって我慢を強いられる家庭や子どものための人生から離れて、自分のためだけに余生を自由に過ごしたい」

 そこにある“夢”と“悲劇”を描く。

  「あの暗さは清張だ・・・」と感じた。


 偶然、家族で見ていたのに誰もチャンネルを変えようとしない。やはり何か惹かれるのであろう。松本清張氏の生誕100年を記念し、珠玉の短編『駅路』が昨夜放映された。30年前に書かれた向田邦子氏の手による脚本を、『北の国から』の演出で知られる杉田成道が脚色・演出。主人公の刑事役に役所広司、事件の鍵を握るヒロインに深津絵里を迎え、今春、スペシャルドラマとして放送する物語は、とある男の失踪事件を巡り、捜査に乗り出した刑事と、それを取り巻く様々な人間模様を描いて行く。


 50歳を越えた年代では、清張も向田も懐かしい存在だ。人生の終着点がどれなのか分からないが、役所広司の口から放たれる言葉は真実のように聞こえてしまった。人生、家族、すべてが流れの中の一瞬であるが、『駅路』の終着点はまだ自分には見えないが、そう遠くではないようだ。